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大阪高等裁判所 昭和25年(ネ)78号 判決

主文

原判決を取消す。

被控訴人の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。

事実

控訴人は主文第一、二項同旨の判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述は原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。

(立証省略)

理由

被控訴人が、その主張の宅地建物を所有していた処、西山東村農地委員会が訴外吉中亀楠の申請に基き、自作農創設特別措置法第一五条第一項第二号により、その買収計画を定め、昭和二四年三月一四日公告し、被控訴人は同月二一日これに対し異議を申立てたが同年五月一六日却下され、同月二四日控訴人に対し訴願した処、同年七月二日訴願物件中井戸敷部分の宅地二合五勺のみについて訴願を容認し、その余の部分の訴願については買収を相当と認めて棄却の裁決をし、その裁決書が同月二四日被控訴人に到達したことは当事者間に争がない。

そこで右裁決の当否について考えるに、成立に争のない乙第一号証、原審並当審証人吉中亀楠の証言及び原審並当審の検証の結果を綜合すれば、買収申請人吉中亀楠は前記法律による買受農地二反六畝を含めて計四反余の農地を耕作して農業に従事し、本件宅地上の本件建物を被控訴人から賃借して、妻子等とともに居住し、もしくは農具、農産物等をこれに収納して農業経営の目的に使用していることが認められ、この認定をくつがえすに足る証拠はない。

そうすると本件宅地建物は農業経営に必要なものであると云はなければならない。而して前記法条による宅地建物の買収は農業経営に必要な賃借物件であれば足り、被控訴人主張のような密接又は従属の関係を要するものではないから(最高裁判所判例集第四巻第七号三二五頁以下所載、同裁判所判決参照)、本件宅地建物の買収は適法であつて、これを認容した裁決は相当であり、被控訴人の請求は理由がない。

よつて民事訴訟法第三八六条、第九六条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。(昭和二六年一月三一日大阪高等裁判所第一民事部)

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